佐藤林業 堀木 翔太さん

四代続く林家の後継者のパートナーとなり
変化の激しいこれからの林業を支えていく
佐藤林業 堀木 翔太さん(25歳)



いなべ市北勢町に社屋を構える佐藤林業は、曾祖父の時代から四代にわたって林業を生業としていました。現在では、三重県認定林業事業体として代表の佐藤誠治さん、代表補佐の佐藤誠さんを中心に、三重県内北勢地域における国有林の間伐を中心に幅広い事業を展開しています。
CSR(企業の社会的責任)活動の一貫として、トヨタ車体株式会社いなべ工場が実施する「いなべふれあい企業の森」における森林整備や木材利用の取り組みに協力したり、地元の高等学校の生徒たちによる林業職場体験を受け入れたりするなど、社会貢献活動も積極的に行っています。

環境への関心や山岳部での活動がきっかけ
当ホームページのインタビュー企画「Voice」。ちょうど区切りとなる10人目の林業従事者としてお話を伺うのは、25歳にしてキャリア7年目となる堀木翔太さん。地元の三重県立四日市農芸高等学校を卒業後、佐藤林業の一員となりました。
「幼い時から、川遊びやキャンプなど自然の中で活動することが好きでしたね。それもあって高校でも、自然環境を学べるコースに進んで、部活動も山岳部を選びました」。
環境問題を日々学びながら、三重県内の名の知れた山々へ登っているうちに、林業への関心も徐々に深まっていったそうです。
「たまに都会に遊びに行くこともありますが、空気も悪いし人混みはどうも性に合わない。やはり自分は自然に囲まれた中で仕事をするのが向いていると思いました」。

山中の現場で作業ができるのを魅力と感じた
「ちょうど久居農林高校から転勤してきた教師がいて、その方に林業に関する情報を教えてもらったり、就職先を紹介していただいたりしました。同級生で林業従事者を志望したのは自分ひとりだったので、ありがたかったですね」と語る堀木さん。
複数の候補があったそうですが、その中でなぜ佐藤林業を選んだのでしょうか。この問いに堀木さんは「この会社だと、伐倒はもちろん、集材、植林に至るまで林業で行う一連の作業を覚えられます。そこに魅力を感じました。森林組合などの大きな組織だと、測量専門とか、事務関連の仕事がメインとか業務が細分化されていて、山中での作業ばかりとは限らない。自分の考える林業のイメージとは差があったので…」と答えてくれました。

山での作業、最初はやっぱりキツかった
山岳部で活動していた頃は、20kg近い荷物が入ったザックを担いで定期的に登山をしていたという堀木さん。林業従事者になった直後に、多くの人が「キツイ」と感じるという体力面での懸念はなかったのではないかと思われますが…。
「いや、そんなことはなかったです。その点は自分もある程度自信はあったんですが、やはりチェンソーを持っての移動とか、集材用のワイヤーを掛ける際に何度も斜面を上り下りするとかは、想像していた以上にこたえました」。一時は「この先、本当にやっていけるのかな」とまで思ったそうです。

怒られるのは「ありがたいこと」と感じる
体力的な問題の他にも、チェンソーの扱い方や重機の操作など技術面の修得にも戸惑ったそうです。「動画などを見て、自分なりに勉強もしていたんですが、やはり思い通りにはいきませんでした」と語る堀木さん。時には怒られることもあったそうですが「怒られるのはありがたいことだとポジティブな気持ちでいましたね。何も言われなくなったら、それこそ終わりだと。僕自身もミスの原因は何だったかというのを分析して、同じ間違いを繰り返さないように心掛けていました」。
代表や先輩たちからのアドバイスからも多くの学びを得たとのことです。「要は慣れと経験から導き出されるちょっとしたコツなんですね。あきらめずに続けたことによって精神面でも大きく成長できたと思います」と当時を振り返ります。

「入社して3、4年目だったでしょうか。急斜面で作業中に突然石が転がり落ちてきて、腰のあたりに運悪くあたってケガをしたことがあります。幸い骨には異常がなく、長期にわたって仕事を休むこともなく、強度の打撲ということで済みましたけど」と語る堀木さん。
「ちょうど夏の暑い時期で、作業も長時間にわたっていたせいで頭がぼんやりして集中力を欠いた時に…って感じです。もし、背中や頭部に直撃していたら、当然この程度では済まなかったでしょうね」と述懐します。
「災い転じて福と為すではありませんが、この一件を機にいっそう緊張感を持って仕事をするようになりました。それ以降大きなアクシデントは経験していません」と力を込めます。

志望者は基本的に採用する方向で考える
「林業はやはり特殊な仕事なので、やってみないとわからない部分が多い。その人が本当に向いているかどうかは本人だけでなく、私にも正直なところ見当がつきません。だから、第一印象がよほど悪くなければ、採用する方向で考えます。堀木君の場合も即決でした」と語るのは、佐藤林業の三代目で代表補佐の佐藤誠さんです。
「この仕事を続けていくには、安定とかお金だけではない何らかの価値を見出しているということが重要ですね。だいたい3年ぐらい経つとそれが見えてくる」と語る佐藤さん。
その時点で「別のことをやりたくなった」という人もいれば、ますます林業にのめり込む人もいるそうです。「過去には女性の林業従事者も在籍していたし、転職したけれどもまた当社に戻ってきたという人もいます。関心があったら、まずはやってみようという姿勢なので、臆せずチャレンジしてもらいたいですね」と呼びかけます。

「堀木君の長所は、とにかく真面目なところ」と語る佐藤さん。要領の良い方とは必ずしも言えませんが、やる気とコツコツと続ける姿勢でその部分をカバーしているとのことです。「入社してすぐの頃は大丈夫かなぁと思ったこともありましたが、今は安心して仕事を任せられます」と堀木さんの成長ぶりに目を細めます。
四代目として入社した長男の奨馬さんとともに、将来を担う存在として大きな期待を寄せているといいます。
「私は現在、20年後のことを考えて仕事をしています。それは息子と堀木君が思う存分力を発揮できるフィールドを整えておくためです。これからは私ではなく彼らが主役となってもらわなくてはならない。当然、求める水準は高くなります」。
二人を中心に、同世代の若者があと何人か加わってくれれば…。佐藤さんの目には、次世代の佐藤林業の姿がくっきりと見えているようです。


現場でキャリアを積むことが何より大事
「当社では伐倒はもちろん、集材、造材、運材、測量、植栽、神社仏閣での特殊伐採に至るまで、おおよそ林業で行われる作業は一通り体験してもらいます」と話す佐藤さん。
「つい最近、息子と堀木君にドローンの免許を取得してもらいました。測量などもドローンを効果的に使う方法が主流となっています。林業の機械化、IT化は進んでいくでしょうが、いくら重機やコンピュータの操作に精通していたとしても、山に入っての作業経験を積んでいなければ物事を俯瞰して見ることができず、適切な判断ができません」と力を込めます。
専門化、分業化も話題となる現代の林業ですが、会社の上層部として活躍するためには、現場でのキャリアが必要不可欠だとのことです。
「覚えることが多くて大変だとは思いますが、今の苦労は後になって必ず活きます」とエールを送る佐藤さん。奨馬さんには主に事務関連を、堀木さんは現場をそれぞれ仕切ってもらいたいと考えているとの構想も明かしてくれました。


父親から「跡を継げ」とは言われなかった
「祖父や父とともに、幼いころから作業場へ行っていて、重機の運転席に乗せてもらったりしていました。学校が夏休みの時は、山に机を持ってきてそこで勉強したりしてました」と、林業がごく身近な存在であったと語るのは、佐藤林業の四代目となる佐藤奨馬さん。
そうなると当然、子どもの頃から父親の次は自分が背負うということを考えていたと思われますが…。
「そこまで意識はしていませんでした。父は祖父から『跡継ぎになれ』みたいなことを言われていたそうですが、僕は面と向かって父にそのように言われた記憶はないですね」。
高校も普通科に進学して、ひたすらサッカーに打ち込んでいたという奨馬さん。「具体的に進路を考える時期になって、やはり家業の存在が大きくなっていきました。どうしても行きたいと思えるところもなかったし、はっきり言って勉強もそれほど好きではなかったので…」と笑みを浮かべます。


今から技術の伝承をしていくことが必要
「入社する時に父からは、まず現場の仕事をしっかり覚えて一人前になれと言われました」と話す奨馬さん。それから5年が経ちますが「技術面で先輩には到底かなわないし、仕事に関する考え方などもまだ及ばない」と謙虚に語ります。
まだまだ修行中の身であって、実際に自分がトップになった時のことなどは何も考えられないと言います。
「例えば林業技士という難関資格があるんですが、祖父も父も合格しているので、従業員はともかくとして僕の立場なら取得しなければいけないというか…。そういう部分でのプレッシャーは感じます」。
ただ、同年代の人材は今すぐにでも欲しいとか。「先輩方が元気でいてくれる今のうちから、少しずつ技術の伝承をしていかないといけない。世代交代を円滑に行うためには、僕と堀木さんだけでは頭数が足りないですね。あと2~3人目標を同じくする仲間がいるのが理想です」と胸の内を話してくれました。


堀木さんの考える林業の魅力というのは、やはり「自然に囲まれた中での仕事」というところに尽きるそうです。四季の移り変わりを肌で感じながら作業をしていると「あぁ、生きているな」という実感が沸くといいます。
「もちろん、いい時ばかりではないですよ。このところ暑さも寒さも一段と厳しくなっているし、一度に降る雨の量とかも多いです。でもそれも含めて林業なんだと思います」。
作業の合間や休憩時間に、自生しているキノコを採ることもあるとか。「カラカサタケやタマゴタケとか、新鮮なうちに食べると美味しいですよ。先輩が採ってきたキノコを分けてもらうこともあります。食べる前に調べて『あっ、これ毒キノコじゃん』という時もありますけどね」と楽しそうな表情を浮かべます。


身体だけではなく、心も強くなるのが林業
「ケガをする危険が常につきまとうのは事実です。ただ、それをネガティブに捉え過ぎるのもどうなのかなと。林業という仕事は、身体的に鍛えられるのはもちろんですが、心も強くなる気がします」と堀木さん。木を伐る前は精神を安定させておかなければならないし、伐った後はどうなるのか、どう動けばいいのか。動物的な直感や予測する力が必要になります。そのうちに、事前に危険を察知して回避する能力も身についてくるとのことです。
同世代の若者と比べると、言動に落ち着きを感じさせる堀木さん。そのことを伝えると「いやぁ、友達同士の時はたくさんしゃべるんですけどね」と笑顔で応えてくれました。
もちろん、奨馬さんともよく話すそうです。「将来のこととか、作業をどう進めていけばいいかとか。やっぱり現状を考えると、人が足りないなぁという話になることが多いです」。
若い二人とともに次世代の林業を担おうという方、思い切って飛び込んでみませんか。


